平成19年度昭和学院短期大学外部評価(「平成18年度自己点検・評価報告書」に関する所感)

 

文教都市・市川市に位置する貴校は、市内に数多くある学校の中でも「自己点検・評価」はもとより、外部評価へのいち早い取り組みを決断されたことは、学長をはじめとする教授陣、学校運営者の全学一丸となって「学校を良くしたい」という強い思いの表れであり、まずはその姿勢に対し敬意を表する次第である。

さて、貴校は教育による人間育成という社会的責任を果たしているが、弊社も都市ガスの安定供給による快適な生活の提供という社会的責任を果たしている。教育機関と民間企業というまったく異なるスタイルではあるが、衣食住といった生活基盤の一翼を担うという意味では共通であり、弊社が行う外部評価が貴校の発展に少しでもお役に立てれば幸いである。

しかしながら、学校教育の運営全般に対しては遺憾ながら認識不足であると共に、貴校の実情や直面する課題などを十分に把握できていない点もあり、評価の内容が貴校の狙いや思いと乖離している点もあると思うが、何卒ご容赦いただきたい。

ところで現在弊社では「日本経営品質向上活動」に取り組み、「どのような組織であるべきか?」という価値を明確にし、「顧客本位」「社員(教職員)重視」「社会との調和」「独自能力」の4つの理念をバランスよく満たす経営を志向し、試行錯誤を繰り返しながら様ざまな取り組みを行っている。よって、「短期大学評価基準」に基づく評価にこだわらず、この4つの要素を主体とした貴校の評価をさせていただくこととする。

 

<顧客本位>

     学生における定期的な「満足度調査」が授業の終了直前に行われている点は、改善点を見出す仕組みとしては一定の評価はできる。しかしながら、現在行われている「満足度調査」では以下の点において改善を要するものと考えられる。

 

@   傾向値は把握できるものの、直面する課題はどこにあるのかが今ひとつ明確になりにくい。一般に行われている調査手法と同様、各授業における総合満足度(点数評価)と、満足・不満足要因との相関関係が明確になるよう調査内容の改善が必要である。

 

A   顧客(学生)本位を目指す上では「授業そのものの質」だけではなく、授業の受けやすさ、指導方法といったものや、学内施設・設備や事務手続、就職支援、寮などの生活支援といった学生が係わるすべてにおいて満足度を把握し、5段階評価による定量調査だけではなく、不満足要因に繋がっている喫緊の課題や、改善点が明確になるような工夫が必要である。

 

B   貴校における「顧客」とはそこに通う「学生」だけではなく、そこに通わせ学費を払っている「保護者」も顧客として捉える必要がある。直接的な満足度を把握することは困難ではあるが、何を期待しているのかは把握しておくことが望ましい。

 

     貴校の就学率は約85%が県内からという状況からしても、地域に根付いた学校であると同時に、県内のシンボル的な学校であるといえる。これは大きな強み(独自能力ともいえる)であり、その強みをさらに強化する取り組みとしては、以下の点を考慮したい。

 

@   図書館運営

2年間という短い期間に学生は、単位や資格取得に向け終日フルに授業を受講せざるを得ない状況の中、現状以上に日中の利用促進を図ることは難しいが、平均の通学時間も都内の他校と比べ短いと推定できることから、図書館における開館時間帯の見直しに加え、閉館時間延長や休日の開館も検討すべきであろう。

 

A   寮の充実

昨今多くの犯罪がはびこる中、常に安全・安心な学生生活を送れることも、学生や保護者に選ばれる学校であるためのひとつの要素といえる。特に女性が95%を占めている貴校においては、下宿希望の通学者に対して、「寮」の増設が困難であるのであれば、不動産業者との提携等により、安全・安心な宿舎の積極的な提供、斡旋も今後は学校の責務となっていくのではないだろうか。

 

<教職員重視>

     弊社は「顧客重視」を旗印にしているが、その原動力となるのは「従業員」である。その担い手である「従業員」が満足していない中においては、経営の目的は達成できないと考えており、課題を明確化するため「従業員満足度調査」を定期的に行い、結果に基づく改善を行っている。貴校においても学生に選ばれる学校を目指す上では、「教職員」の現状における不満足要因や将来の不安要因等を定期的に把握し、分析結果を真摯に受け止め、明確になった課題にひとつずつ取り組んでいく必要がある。ただし、教職員満足度とは賃金や福利厚生の向上にとらわれがちであるが、「満足度」としては以下の項目全体を指している。

 

@   経営の方向性について

A   直属の上司について

B   仕事(担当業務)について

C   コミュニケーションについて

D   能力向上について

E   職場環境や福利厚生について

F   人事制度について

G   総合評価

 

     また、弊社においては、当社以外の多くのビジネスパートナーに業務を担っていただき、顧客満足度の向上に取り組んでいる。貴校も同様に多くのビジネスパートナー(食堂運営事業者、校内清掃事業者等)が学生の満足度に寄与している。そのようなビジネスパートナーとの協力、信頼関係の構築も、目的の達成には大切なことである。そこで弊社では「従業員満足度調査」と同様に、「ビジネスパートナー満足度調査」も定期的に行い、結果に基づく改善を行っているが、こちらも可能であればぜひお奨めしたい。

 

<社会との調和>

     社会人入学を積極的に受け入れている点は大いに評価できるところではあるが、入学者数がここ数年減少化傾向にある点は憂慮すべき点である。今後は高齢化社会の進展に伴い「資格取得」への意欲の高い人材が増えてくるものと考えられるので、近隣企業への積極的かつ継続的なPRが必要と考える。(貴校ホームページへの掲載や、例えば一部の企業で行われている退職前に開催される「ライフプランセミナー」などでの紹介等)

 

     学生支援の一環として現在行っている「インターンシップ」について、学生の自主性に任せるのではなく、貴校が推薦する県内優良企業を選別し、該当企業に対し継続受け入れの積極的な働きかけを行うことが有効であると考える。県内出身者が大半を占めており、県内企業に就職する学生も多いものと推察される中、県内優良企業との太いパイプ作りは、貴校の信頼を一層深めると共に、貴校のPRにもつながり、ひいては派遣先企業関係者から選ばれる学校としての期待もできる。

 

<独自能力>

     設立以来長い歴史の中で「変えてはならないもの」と、時代の流れと共に「変えなくてはいけないもの」の双方を明確に認識している点は、独自能力を大いに発揮していると評価できる。「変えてはならないもの」としては、少子化による学生数減少が見込まれる現況において、多くの短期大学が4年制大学を志向する中、貴校は職業教育を柱とした教育カリキュラムに多くの学生のニーズが存在することを認識し、明確なポリシーのもと短期大学制を貫いている。また「変えなくてはならないもの」としては、男女共同参画の流れを汲み、男女共学制を導入すると共に建学の精神である校訓「明敏謙譲」の解釈を改めたことである。

 

     就職率100%を達成している点は、学生に対する教職員一体となった進路指導や就職支援の充実をうかがわせるものであり、大いに評価できる。「自己点検・評価報告書」の中にも課題として掲げられている「卒業生対象アンケート」の実施については、早急に取り組むべき課題である。現役当時は気づかない点においても、卒業し就職してはじめて母校での教育指導等のありがたさに気づく卒業生も多くいるはずであり、貴校の強みを正確に知り得る上では重要な課題であると共に、今後の貴校案内パンフレット「Camps Guide」の充実にもつながるものと考える。

 

<全体を通して>

     「中・長期財務計画」を今後策定予定ではあるが、その中に3年程度先を見据えた中期ビジョン(経営計画)なるものの策定をお奨めする。やはり「顧客本位」「職員重視」「社会との調和」「独自能力」の4つの柱において、「どのような学校であるべきか?」を自問し、それに向けた中・長期の全学一丸となった行動計画を策定し共有することが、貴校の卓越した学校経営への近道だと考える。また、その確固たる取り組みをパンフレットやホームページ等で社会に公開することで、貴校への信頼が一層深まるものと考える。

 

     多くの学校は少子化の進行による定員割れのリスクを抱えており、独自色を前面に押し出すことで学生を集めなければ財政基盤が弱体化し、存続すら危ぶまれる可能性も否めない。つまりこれからの学校経営も企業経営と同様、常に改革・改善を行っていく必要がある。このことを学校関係者一人ひとりが十分認識し、各自が持ち場持ち場でリーダーシップを発揮していくことが組織力を高め、「卓越した学校経営」に結びつくものと考える。そこで今一度以下について整理してみることをお奨めする。

@   「ミッション(Mission)=使命」(なぜ昭和学院短期大学は存続し続けるのか?(Why))

 

A   「バリュー(Values)=価値観」(何をもって昭和学院短期大学のミッション(使命)を果たすのか?(What))

 

B   「ビジョン(Vision)=希望する姿」(昭和学院短期大学はどこを目指すのか?(Where))

 

C   「ストラテジー(Strategy)=戦略」(ミッション(使命)を果たし、ビジョン(希望する姿)を達成するためにはどうするのか?(How))

 

     就職率100%や社会人入学制度などの「強み」や「独自性」を前面に押し出した、戦略的PRのあり方を今一度考えられてみてはいかがだろうか。やはり学生に選ばれるためには魅力的な学校であることが必要だが、その魅力を十分に認識してもらわなければ意味がない。露出度を高め繰り返し伝えることが最も効果的ではあるが、一例としては以下のことが考えられる。

 

@   ホームページの充実

受験する学校の詳細情報を入手する手段として、パンフレット類と並んでホームページは大きな役割を担っていると同時に、サイト訪問者に対する学校のイメージを鮮明に植えつける場として非常に重要である。中でもトップページは学校の「顔」であり「受付窓口」でもある。そういった意味では、貴校のホームページはややインパクトに欠けていると感じられるため、トップページの改定やコンテンツの充実について検討されることが望ましい。

例)トップページへの社会人入学案内

就職率100%など貴校の強みの紹介

シラバスの掲載 等

 

A   昭和学院短期大学ブランドイメージの策定

 

B   他校、他企業におけるPR手法のベンチマーキング 等

 

     「自主点検・評価報告書」には「何ができていなくて、しなければならないのは何か?」が明確に認識されており、これらの課題に対しまず早急に具体的行動をとられることが必要ではないだろうか。ただし、課題解決に向けた取り組み手法として、単に理事長や学長からのトップダウンで担当者に指示するのではなく、改善・改革に前向きな教職員を中心に、部門や部署横断型でのチームによる行動が効果的な課題解決につながる。また、一定の権限を委譲することで、担当者のモチベーションを維持向上させ、より早期に課題解決が図られると考える。

 

<付 記>

「自己点検・評価報告書」や理事長、学長をはじめとする教職員とのヒアリングを通じ、貴校の「独自性」と「学生に対する強い思い」を感じることができた。また、理事長や学長の強いリーダーシップのもと、教職員全体が一丸となって「短期大学を今以上に良くしたい」という思いが伝わってきたのも事実である。

外部評価については今回初めての取り組みということで、今後の改善に大いに期待するところではあるが、ぜひ7年に1度の点検に終わらずに、定期的な点検及び第三者評価を受けることにより、時代の流れに即した学校運営を期待する次第である。

 

                                平成20125

                              京葉ガス株式会社

取締役社長 佐久間 信夫